木造十一面観音立像
もくぞうじゅういちめんかんのんりつぞう
概要
・この仏像は、13世紀前半に、奈良を中心に活躍した南都系の仏師善円の作風に近似しています。やわらかく写実的な衣文や、やや複雑に結い上げた高い髻(もとどり)、凛々しく若々しい面相部の表現はこの時期の作仏の特徴をあらわしています。
・十一面観音には普通、頭頂に菩薩面3、瞋怒面(しんぬめん)3、牙上出面3、大笑面1および頂上を仏面としますが、この仏像には、そのうち瞋怒面2面が欠落しています。頭頂にはこのほかに、正面に蓮華座に立つ化仏1躯を配しています。
・左手は腹部前で宝瓶(ほうびょう)を握り、右手は本来、錫杖(しゃくじょう)を持っていたと考えられます。
・この十一面観音立像は、明治23年(1890)ころに京都から伝来し、苫前町最古の寺院である金宝院(万延元年(1860)創立)に宝蔵されていました。長く、金宝院に安置されていましたが、平成8年に苫前町に寄贈され、現在寺院は廃寺となっています。
・なお、台座は後補ですが、裏面に「元禄九年四月」(1696)、「宝永四年十月」(1707)、「尊栄」などの墨書があり、その由来を裏付ける資料となっています。
・この仏像は、北海道では数少ない鎌倉時代の作仏として貴重なものです。