奥入瀬の溪流
概要
112 安井曽太郎(1888−1955) 奥入瀬の溪流 1933年
京都市生まれ。1904年聖護院洋画研究所に学び、07年渡仏。アカデミー・ジュリアンに入学、ジャン=ポール・ローランスに師事、14年帰国。翌年第2回二科展に渡欧作44点を特別出品し、同会会員に推挙される。35年帝国美術院会員。36年有島生馬、石井柏亭らとともに一水会を創立。44年東京美術学校教授。52年文化勲章受章。
1932年に安井は初めて十和田湖を訪れ、その帰途奥入瀬に立ち寄った。省略や変形、強調を加えながらも、現実感のある写実的な画面を構築しようとした安井だが、ここでも暗い前景から明るい後景への空間のつながりや幹が複雑に交錯する樹木の重なりを巧みに描き分け、青葉に囲まれた奥から水音をあげて流れてくる溪流をみずみずしく描き出している。様々な諧調の緑と白く照り輝く水流の共鳴が、流れるような筆致とともに運ばれ、澄んだ自然のすがすがしさを伝えている。