倣郭煕秋景山水図
ほうかっきしゅうけいさんすいず
概要
湧き上がるように聳える主山を中心に、左右に水景と渓流を配置して空間の奥行きを構築的に描き出した、朝鮮時代・15世紀を代表する山水画の優品。その構成と表現は、中国・北宋時代の宮廷画家・郭煕の唯一の現存作品・早春図(台湾・国立故宮博物院)に近似するため、おそらく本図は韓国へ伝来して高い評価を与えられた郭煕の真筆をほぼ直接的に写したものとみられる。その合理的で完成度の高い描写からみて、具体的な作者名を特定できないものの、朝鮮宮廷の図画院の画員が手掛けた作品と考えられる。韓国で積極的に受容されながら、日本ではほとんど顧みられなかった中国の李郭派の山水画様式を伝えるため、日本文化の形成を東アジア美術のなかで理解するための山水画として大きな意義がある。
<畑靖紀執筆, 2024>