銭塘観潮図
せんとうかんちょうず
概要
杭州湾に注ぐ銭塘江が毎年旧暦の8月に2丈余(約6メートル)の高潮を招くことは古来有名で、酈道元の『水経注』をはじめ、詩文にも詠じられ、好画題ともされて来た。その観潮の雄大な景色を描いたものとしては閻次平の「江潮図」ほか若干知られるが、現存する作品としては李嵩款、楊妹子題の画冊中の一幀(台北、故宮博物院蔵)などが知られる。団扇形の小画面の本図も、この李嵩画と構図の上からもほとんど差がなく、南宋院体様式の強い影響下に、13世紀中頃に描かれたことが推定される。下部の楼閣は高潮を下瞰するための天開図画台であろう。
紙中紙上に月翁周鏡・蘭坡景茝・天隠龍沢・正宗龍統・了庵桂悟・桂林徳昌・景徐周麟ら7人の五山衆の賛がみられ、当時禅林で流行した詩画軸形式に仕立てている。これら詩僧の歿年からみると、本画が遅くも15世紀末までに日本に舶載されていたことが知られる。
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