花鳥蒔絵螺鈿聖龕
かちょうまきえらでんせいがん
概要
木製漆塗。観音開きの扉を設けて、頭頂部に三角形の破風を設けた大型の聖龕。総体黒漆地とし、金平蒔絵に絵梨子地、螺鈿、針描を交えて、扉表には土坡から伸びる桜、椿等に鳥を、蓋裏には菊、桔梗を描き、破風内には唐草を描く。龕の正面にはアーチ状の開口を設けて、内部には頭光と星を描く。
聖龕は、観音開きの扉のうちに礼拝対象となるキリスト像や聖母子像などの図像を収める厨子である。しかしながら本品は、奥行をやや深くとっているところから、絵画ではなく立体像を収めたものと見られる。空間を埋め尽くすような文様構成や平蒔絵を基調に螺鈿や針描を交えた技法はいわゆる南蛮漆器に共通しているが、大型で複雑な構造や、内外面に施された入念な加飾からは特別な注文品であったことがうかがえる。