高岡彫刻塗 鯛菓子器
たかおかちょうこくぬり たいかしき
概要
円形にデザインされた鯛が彫刻塗で表現された菓子器。胸鰭(びれ)をつまみとした蓋が付けられている。
鯛の頭から鰓(えら)にかけての盛り上がっている部分には、菓子器本体の口縁に沿ったひび割れが発生している。
底面には傷が数多く付き、一部は漆が剥落して木地が露出している。
<参考>
鯛菓子器は、大正末期に、村田和吉、舟木喜太郎らによって作られたのが始まりといわれる。この丸肉彫菓子器は、八寸から二尺ちかいものまであり、写実的で立体感にあふれたものである。蓋の部分は、あたかも生造りのように胴から切り離してあり、胸ビレをつまみとした意匠は“工芸の粋”というべきものであろう。
(『日本漆工 高岡漆器特集号』社団法人日本漆工協会,昭和56年)
彫刻塗は、江戸中期に活躍した名工、辻丹甫の技法を元祖としており、その代表的なものは高岡御車山に見ることができます。木彫堆朱、堆黒などによる雷紋や、亀甲の地紋の上に草花鳥獣、青海波、牡丹、孔雀などを彫りだしたものが多く、立体感と独特な艶が表現できるのが特徴です。辻丹甫の技法は慕末、板屋小右衛門らに受け継がれ、明治27年に富山県立工芸学校が設立されたことを機に、新たなデザインの開発を生みました。その後は、産業としても発展し、海外にも輸出するなど幅広い評価を得るものとなりました。現在、高岡の彫刻漆器は、色漆による彩色技法、あるいは全体を朱塗りした後、凹部にマコモ墨を入れて陰影をつける皆朱塗りなどによって数多くの作品が生み出されています。
(「高岡漆器3つの技法 彫刻塗」伝統工芸高岡漆器協同組合HP,令和5年12月22日アクセス)