松喰鏡
マツクイキョウ
概要
深緑色。截頭形の捩菊座鈕で、鈕孔軸のハバキ痕跡が浅く残る。外傾細縁。鈕を中心に双鶴が旋回し空間に松葉を散らす松鶴文は、平安後期に最も好まれた鏡文様の一つである。本鏡のように鶴が外向きに左旋回するものが最も多く、時期も早くに位置づけられる。年代の知れるものでは、春日大社蔵永治元年(1141)墨書銘の松喰鶴鏡が最古で、十二世紀後半に盛行する。鶴は本鏡のごとく輪郭線で描くものと肉取り高いものがあるが、とくに前者は鏡胎の薄い細縁鏡のみに見られ、特定の工房で生産された可能性が高い。