朝顔狗子図杉戸
あさがおくしずすぎと
概要
尾張国、現在の愛知県西部にあった明眼院(みょうげんいん)というお寺の書院の廊下に設置されていた杉戸です。このお寺は、かつては眼病治療をする寺として有名で、作者の円山応挙(まるやまおうきょ)も治療のお礼に書院の襖絵などを描いたと伝えられています。この建物は、東京国立博物館の庭園に移築され、応挙館という名で親しまれています。
柔らかい毛の手ざわりが伝わってくるような、むくむくとした子犬が描かれています。右側の3匹は仲良く寄り添い、左側の2匹のうち、茶色い子犬は朝顔の蔓にじゃれついているようです。応挙の、子犬に注ぐ慈愛に満ちたまなざしが感じられます。
一緒に描かれた朝顔は、これが子犬であるというスケール感を伝えるとともに、その青と緑色が、寒色系の清涼感で画面を引き締めています。
また、この杉戸はずいぶん下の方に絵が描かれていることに気がつかれるでしょう。まるで、私たちが立つ地面と地続きにつながった世界に、この子犬が遊んでいるようなリアルさです。治療のために、寺にはいろいろな人が出入りしていたと思われます。きっと親についてきた子どもの目には、この低い位置に描かれた犬と朝顔の絵が、親近感をもって映ったことでしょう。
愛らしく無垢な子犬を、本物らしく見える構図や立体感でわかりやすく描いた、応挙ならではの魅力に満ちた作品です。