贈高陽先生小景図
コウヨウセンセイニオクルショウケイズ
概要
王き(一六三二-一七一七) 字は石谷は江蘇常熟の人。清時代の文人画の正統派を代表する巨匠である。康煕三〇年(一六九一)、招かれて北京に上り、康煕帝の江南巡幸を記念する南巡図巻の制作に主幹画師として従事する。図巻は五年の歳月を経て完成するが、王きは完成後もなおしばらく都にとどまって貴顕と友誼を結び、帰郷するのは、康煕三七年の九月である。本図はこの年の五月八日、まだ都に滞留する王きが、同郷の友人で先に帰郷しようという高陽先生、許天錦へのはなむけとして、久しく離れている故郷の風景を懐かしみ描いた小景図である。細密画風の筆墨は、繊細で詩情に溢れ、王き画の中でも特に秀逸である。図の脇には、近代の文人で収蔵家としても知られた翁同わの跋が付き、高陽先生が同わの母方の先祖にあたる因縁と図を取得した経緯が記されている。