藤原祐長絹貢進状
ふじわらすけながきぬこうしんじょう
概要
現在、紀ノ川の河口南岸付近に位置する宇治の地は、かつて紀ノ川の流路が移動して形成された氾濫原・中洲にあり、すでに『日本霊異記』にその名がみえる。本文書は、平安時代後期の宇治保の保司・藤原祐長が、これまで通りその職に就くために、八丈絹10疋を国衙に進上したことを記す。保司とは、国司の認可のもと、未墾地を開発して保という所領の単位を設け、保の中での勧農や官物(国衙への貢納物)納入の権限を与えられた者のことである。なお、本品は紙背に仏典の注文が記されており、東大寺文書という由来がある。