兵庫県茶すり山古墳出土品
ひょうごけんちゃすりやまこふんしゅつどひん
概要
本件は、兵庫県茶(ちや)すり山(やま)古墳から出土した副葬品と埴輪の一括である。
茶すり山古墳は兵庫県朝来市(あさごし)和田山町(わだやまちよう)筒(つつ)江(え)字梨(なし)ケ谷(だに)に所在し、長径約九十メートル、短径約七十八メートル、二段築成の円墳である。
平成十二年度~平成十四年度(二〇〇〇~二〇〇二年度)、北近畿豊岡自動車道建設に伴う発掘調査で、未盗掘の二基の埋葬施設(木棺直葬)から、多量の副葬品が出土した。
本件は、この発掘調査で出土した主要な出土品六百六十四点で、その内訳は第一主体部の出土品が金属製品五百点、玉四十一点、漆製品残欠十七点、第二主体部の出土品が金属製品七十二点、玉二十点、竪櫛(たてぐし)二点、墳丘の出土品が埴輪十二点である。
金属製品では、第一主体部出土の二組の甲冑が特筆される。三角板革綴襟付短甲(さんかくいたかわとじえりつきたんこう)は畿内以外の地域では初の出土例で、三角板革綴衝角付冑(かわとじしようかくつきかぶと)と組み合う。もう一領は長方板革綴短甲で、頸(あかべ)甲(よろい)・肩甲(かたよろい)・竪矧板鋲留衝角付甲冑(たてはぎいたびようどめしようかくつきかぶと)と組み合い、鋲留技法導入期の良好な出土例である。また第一主体部からは、刀剣類や鉄鏃など多量の武器も出土しており、被葬者の武人的性格が強く示されている。
埴輪には、円筒埴輪と朝顔形埴輪のほか、入母屋造の大型家形埴輪や線刻文様で飾る翳(さしば)形埴輪が含まれ、埴輪祭祀の具体像も復元できる。
これらは畿内周縁の有力首長墳における葬送儀礼の実態、畿内政権と地域首長との関係、古墳時代の工芸技術を知る上で極めて重要な資料である。