木立のある風景
こだちのあるふうけい
概要
ウィルム・デ・ヘゥスは17世紀オランダの画家ヤン・ボト(1615頃―1652)の弟子であったと考えられており、師の作風を忠実に守った画家である。本作に描かれた構図や主題を理解するためには、ヤン・ボトの様式を解読することが必要であろう。ヤン・ボトはイタリア、ローマ平原の空想的な、または現実の景観を背景として描いた一群のオランダ人画家のリーダーで、その画面上には牛を追う農夫や、夕陽に映えるローマの廃墟を眺める旅人が登場する。本作は、このボトの描く風景の生き写しで、樹木、植物、岩、急流、その上に架かる橋、山道を往く旅人(ここでは赤ん坊を抱いた若い母親がロバに乗り、その傍らをその夫と覚しき男性が歩いている)、牛と山羊を追う牧童たち、遠くの廃墟など、画面に登場すべき〈要素〉がすべて盛り込まれている。ここにはアルプス以北の国々の画家たちが理想とした、南の国イタリアの明るい陽光と牧歌的な詩情あふれる風景への憧憬が託されているのである。
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