プラットホーム
ぷらっとほ-む
概要
遠くまで伸びるプラットホーム。冬支度のまばらな乗客が、思い思いに汽車を待ちます。
作者の檜山武夫(1906-1932)は、広島市出身。広島機関庫で働きつつ、昭和初期の画壇で活躍。仕事柄、なじみ深い駅の日常を描いたこの作品では、念願の全関西展・初入選を果たしています。同展の審査員であった黒田重太郎は、「履き違への新しさや、空虚な様式主義」に陥ることなく「實感味に富んで」いることに好感を覚えるとともに、その冴えた色彩や根強い描写から、強い印象を受けたといいます。落ち着いたやわらかな色調と、丹念に絵の具を塗り重ねた壁や床。構内には、ほんのりと穏やかな日の光が射し込みます。実際の情景を知らなくても、どこか懐かしさを覚える画面には、この情景に注ぐ画家の温かな眼差しと、細部まで緻密に描こうと筆を重ねる、ゆっくりとした時の流れも塗り込められているようです。