山中和紙
さんちゅうわし
概要
山中和紙は現在の飛騨市河合町で生産される。約800年前には始まっていた飛騨の紙漉きの流れを受けると考えられ、江戸時代の最盛期には200戸が紙漉きをしていたと推定される。伝統的地場産業である山中和紙が他の和紙の製作工程と大きく異なる点は2点ある。まず、当地が和紙の原材料となる楮とトロロアオイ(この地方ではネーレ・ネレ・ネリとも言う)を育成するのに適した気候であり、全ての原材料を地元で栽培している点である。次に、製作工程が昔ながらの手法を用いほぼ手作業であるという点が挙げられる。手作業の中でも特に「雪晒し」は雪の上に直接楮を晒すことで紙の自然漂白を促すものである。さらに、冬の冷たく澄んだ山水で楮を洗い、丈夫で白い和紙に仕上げる。飛騨市河合町の厳寒な気候を活かした山中和紙独特の工程である。現在は時代の流れとともに生産・需要ともに減少し、2軒のみで生産している。なお、紙漉きは河合町のいなか工芸館で体験が可能であり、随時普及活動を行っている。さらに、河合町の保育園の卒園証書、小学校の卒業証書、成人式の証書に山中和紙は使用されており、河合町民は人生の節目に山中和紙と触れ合ってきている。