水浅葱地花菱桐菱繋模様摺箔
みずあさぎじはなびしきりびしつなぎもようすりはく
概要
淡い水浅葱色の繻子地に花菱文と桐菱文を交互に繋ぎ、金・銀箔で摺り表し、裾近くは空けている。桐菱文はこの摺箔のために考案されたのであろう。五三桐紋を菱形に変形させ、中央の枝が右や左にたわんだ、特殊で手の込んだ意匠である。前襟の裏には「川嵜本家」と墨書のある木綿布片が縫い留められているが、土佐藩主山内家伝来品である可能性が最近になって浮上した。
「紅地麻葉繋花車模様縫箔」と同時に出現していることから、土佐藩12代藩主・山内豊資所用でのちに分家で甥の山内豊章に預けられ、明治維新後に高知城下の豪商・川崎源右衛門家に譲渡されたもののひとつである可能性がある。また山内家の替紋のひとつに花桐紋(土佐桐紋)があり、桐紋が山内家と所縁が深い特別な紋章であることもそれを補強している。
参考文献:『土佐山内家の能楽』(国立能楽堂 2018年)