象潟
きさかた
概要
鳥海山は標高2237m。秋田・山形の県境にあり,日本海からそそり立つ成層火山である。今からおよそ2600年前,噴火に伴う山頂付近の崩壊により発生した岩なだれは,当時の日本海に流れ込み,浅い海とそこに浮かぶいくつもの小島(流れ山)をつくった。やがてこの海は,海岸砂丘によって塞がれ,汽水湖(古象潟湖)が形成された。これが古象潟湖である.1689年(元禄2年)当地を訪れた芭蕉が目にしたのはこの景観である。その後1804年象潟付近で地震が起き,象潟付近は2mほど隆起した。このため古象潟湖は干上がり,現在のような流れ山の周辺に水田が拡がる光景が出現した。今でも春,高台から眺めると田には水が引かれ,芭蕉が目にした象潟がよみがえる。
秋田縣由利郡ノ日本海ニ臨メル西部一帶ノ地ハ曽テ鳥海火山ヨリ噴出シタル火山泥流ニヨリテ蔽ハレタルガ其泥流ノ南端ニ當レル象潟町ニ属スル南北五キロメートル東西一.五キロメートルノ地域ハ嘉祥年間土地陷落ノタメ海水ノ浸ス所トナリ泥流中ノ「流レ山」ハ大小數十ノ嶋嶼トナリテ松樹其ノ上ニ茂リ宛然松島ノ景ニ髣髴シ八十八島九十九潟トシテ其ノ名世ニ喧傳セラレタリ
然ルニ文化元年六月出羽大地震ニ際シテ其ノ地域再ビ隆起シテ陸地トナリ往古ノ潟ハ化シテ稻田トナリ風景一變シタレドモ古ノ嶋嶼ハ今尚稲田中ニ大小六十有五ノ松丘トナリテ点在シ地変以前ノ名残ヲ留ム
稲田下ノ泥土中ニハ今尚蚶貝(象潟ノ地名ハ蚶潟ヨリ轉訛シタルモノナリ)ヲ始トシテ數多ノ貝殻ヲ埋存シ其ノ曽テ淺海底タリシヲ證ス
火山及地震ニヨル土地ノ隆起及陷落ヲ示セル自然記録トシテ興味アリ且重要ナルモノナリ