饕餮文卣
とうてつもんゆう
概要
楕円形の胴部に蓋と大きな提梁(把手)が付いた卣(酒壺)である。提梁は楕円の短辺に沿って渡され、上面には蝉文を並べ、裏面には蛇腹文を付け、両端には犠首を飾っている。蓋の左右には角状の突起が付けられ、頂部には茸状の鈕が付き、これに突稜が十文字に付き、その長辺の稜を中心に饕餮文があらわされている。蓋の側面と身の口縁下には虁鳳文が並ぶ。胴には饕餮文があらわされ、脚部には虁龍文が並び、その下部は無文で高く立ち上がっている。このような形や、雷文を地紋として饕餮や虁鳳文を肉高にあらわすのも、安陽期の出土例に近いものではないかと考えられる。身、蓋とともに内面に「禾」と読める図象文字が鋳出されている。その豪快な作行きと、褐色に光る器体が美しい作品である。
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公益財団法人 根津美術館