大威徳明王騎牛像
だいいとくみょうおうきぎゅうぞう
概要
四肢を折って蹲(うずくま)る水牛の背に坐す、六臂六足(ろっぴろくそく)の大威徳明王(だいいとくみょうおう)像。五大明王のなかの一尊として西方に配されることも多いが、大分・真木区や滋賀・石馬寺像などの単独尊の作例も少なくない。本像はその持物を失うが、左方には戟(げき)や輪索(りんさく)、右方には剣や棒を持ったと思われる。像本体と水牛は別製で、また明王像の腕等も別鋳である。独尊の場合、調伏法(ちょうぶくほう)の本尊ともなりうるが、平安時代後期以降、経軌(きょうき)に勝軍法を説くところから、戦勝祈願のための造立の事例も多い。穏やかな作風はいかにも平安時代後期のそれである。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.121, no.163.