真如堂の十夜鉦
しんにょどうのじゅうやがね
概要
真如堂の十夜鉦とは,毎年11月5日より15日までの11日間,天台宗の鈴聲山真正極楽寺(真如堂)本堂で行われる十日十夜別時念仏会(十夜法要)に伴う,いわゆる双盤念仏である。十夜法要とは,十日十夜の善行すなわち念仏が,仏の国で千年間の善行を積むことにも勝ると『無量寿経』にあることによる法会で,真如堂で行われたのが最初であるといわれている。双盤念仏とは,十夜法要から生まれたもので,鉦鼓を打ちながら特殊な節をつけて念仏を唱えるもので,地域によっては十夜法要だけでなく,他の機会にも行われるようになった。
真如堂では十夜法要の期間中,本尊の阿弥陀如来の御開帳があり,十夜法要を始めたとされる伊勢貞国の絵像が脇壇前に祀られる。また,15日には「たれこどめ」に効くという小豆粥の施行がある。
十夜鉦は,鉦講の8名が左右の鉦座に上がり,独特の節で唱える念仏にあわせて,一尺二寸の鉦鼓を打つ。伝承されている曲は17種類で,そのうち8曲に念仏が伴い,ほぼ全曲が毎日演奏される。本尊に向かって左端に座る肩(肩打ち)は,開闢と結願,閉帳の時は熟練者が勤め,7名はその挙動に従う。他の日は,一座ごとに交代して肩を勤める。
演奏は「笹づけ」で始まり,念仏を伴う曲に移る。「地念仏」は,肩が合図を出すまで延々と繰り返される。次の「佛がけ」と「陀がけ」は一対の曲で,あわせて仏陀となる。続いて「三ツ地」,「四ツ地」があり,調子が速まり「早四ツ地」となる。「追いがけ」は後戸の半鐘と掛け合いの演奏であるが,結願以外は半鐘が省略される。「定の入り」は肩が声をはりあげ,最高潮を迎える。
その後は鉦だけ(素鉦)で,鉦鼓の打ち方の妙技が披露される。「笹づけ」に似た素鉦の地で始まり,大音響の「大鉦(おおがね)」,大小交互に拍子をとる「そそり」,3・ 1・3・1という拍子の「三ツ裏」,撞木を後ろから前に擦るような打ち方を交える「あてそそり」,4方向からの打ち方を披露する「打ち分け」,そそりからだんだん小さくなる「そそり流し」,打ち分けと流しを合わせたような「たぐり」を2回繰り返し,最後は鉦講全員で十念を唱える。その後,「笹づけ」をひとしきり演奏して一座が終わる。
5日の開闢と,15日の結願・閉帳には,内々陣に一山の僧侶が入り,鉦講の進行にあわせて,読経や厨子の扉の開閉を担う。