瓦塔(静岡県三ヶ日町出土)
がとう(しずおかけんみっかびちょうしゅつど)
概要
木造建築の塔を模した、焼物の小塔を瓦塔とよぶが、この小塔は静岡県の三ヶ日町の山中にあった小堂の中に納置されていたと考えられる瓦塔である。この塔は五重塔で、相輪部、屋蓋部、軸部、基壇の4部分から構成される。しかし相輪部は出土遺物がなく、新たに補作されている。屋蓋部は本瓦葺(ほんがわらぶき)で表され、軒廻りは二軒(ふたのき)構成で、柱間は初層が3間に、それ以上は2間にしている。柱や組物は丹念に表現され、初層の内部には内陣にみたてた箱形の置物が据えられている。
年代については、かつて平安時代前期とされていたが、近年の研究で、愛知県の猿投(さなげ)古窯の出土品の中で、奈良時代後半の770年ごろに営まれた黒笹(くろざさ)8号窯の遺物に形態が類似しているので、その時期の焼成品とみられるようになった。
瓦塔の用途については、木造塔の代用品説などが提唱されているが、まだ明確にはされていない。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.281, no.16.