遠江森町の舞楽
とおとうみもりまちのぶがく
概要
これらの舞は、舞楽が地方に伝播し、民俗化して定着したもので、小国神社、天宮神社の舞楽は奈良春日神社系の舞楽が地方化したものであり、山名神社のそれは舞楽の風流化したものの典型例であって、これらは舞楽の変遷を知るうえで貴重である。それぞれ神社の祭礼に行われる芸能として伝承されており、今後も正しく伝承されることが見込まれるので重要無形民俗文化財に指定し、その保存を図っていきたい。
小国神社、天宮神社の舞楽は、それぞれ「連舞【えんぶ】」「色香舞【しきこうまい】」「蝶【ちよう】の舞【まい】」「鳥【とり】の舞【まい】」「太平楽舞【たいへいらくまい】」「新靺鞨舞【しんまかまい】」「安摩舞【あんままい】」「二【に】の舞【まい】」「抜頭舞【ばとうまい】」「陵王舞【りようおうまい】」「納蘇利舞【なそりまい】」「獅子舞【ししまい】」の十二曲(小国神社には番外曲「花の舞」があり、天宮神社では曲目名に多少の違いがある。)を伝える。この中には悪魔払い、五穀豊穣の獅子舞があり、稚子舞を加味するなど中央と異なった演技、演出がみられる。
また、山名神社では「八初兒【やつはち】」「神子舞【みこまい】」「鶴【つる】」「獅子【しし】」「加陵鬚【かりようびん】」「竜【りよう】」「蟷螂【とうろう】」「優填獅子【うでんじし】」の八曲を伝えるが、この中には舞い手が鶴、竜、蟷螂【とうろう】などの作り物を頭にいただく風流の要素が強く、舞い手が柱に昇り逆になって上半身を煽ってみせる散楽【さんがく】風の要素もあるなど独特の演技、演出を見せる。