聖観音像
しょうかんのんぞう
概要
聖観音は密教で説かれる観音で、十一面・千手・馬頭・如意輪・不空羂索・准胝などの変化観音に対して、変化しない観音をいい、息災、除病などに修する聖観音法の本尊として用いられる。その像容は不空訳「聖観自在観行軌」などに説かれるが、身色・手印・契印など本画像と合致する経軌はなく、むしろ『別尊雑記』卷第十七所収の成蓮房兼意のいう聖観音に近い。
大月輪の中の紅蓮華に坐し、右手は胸前に掲げて掌をかざし、左手に紅蓮華の長い茎を執る姿で、項と背に火焔の立つ円光を負う。化仏のある宝冠を頂いて青髪を両肩に垂らし、肉身は白肉色に塗り、淡紅の隈を施し、朱の細線でくくる。条帛、裳は白に塗り、淡茶の隈を交互に賦し、墨線で衣褶を入れる一方、宝冠、耳璫、瓔珞、臂釧、腕釧は金泥をやや厚く掘り塗りにしてあらわす。月輪の下辺は石畳とし、上辺には湧雲が描かれる。
聖観音の理智的な面貌と端正な姿態は古い像容を伝えるが、金泥による装身具の表現や湧雲の描写には形式化が認められ、制作時期は鎌倉時代中期を下るとみられる。
所蔵館のウェブサイトで見る
公益財団法人 根津美術館