黒漆宝篋印塔嵌装舎利厨子
こくしつほうきょういんとうかんそうしゃりずし
概要
黒漆宝篋印塔嵌装舎利厨子
こくしつほうきょういんとうかんそうしゃりずし
奈良県
鎌倉時代/1201-1300
木製黒漆塗、下框に格狭間付き上框を重ねて基壇部とし、両面に両開扉を有する軸部を乗せた舎利厨子である。軸部は箱形で、扉内外の軸側上下二か所ずつに金銅羯摩形蝶番を、扉の召し合わせ中央に金銅輪宝形掛金具を付けている。軸部内は奥壁を設けて仕切り、両面扉内側にそれぞれ板壁を一面ずつ慳貪状にはめている。板壁のうち一面は表に釈迦金輪坐像を、裏に胎蔵界種子曼荼羅の中台八葉院を彩絵し、もう一面の表には金銅板製の宝篋印塔形舎利容器を嵌装している。この宝篋印塔は全階式で、軸部には円孔をあけ、水晶製円板を当てて窓をつくり、板壁の裏から金銅製の蓮華座付き舎利容器を当て、窓から覗かせている。なお、彩絵面板壁の奥に、粘葉装法華経八帖を納置している(現在は別途保存)。
(厨子)総高24.9 幅(基壇幅)20.0 奥行(基壇奥行)12.4(㎝)
(附法華経)各縦12.9 各横5.5(㎝)
1基
奈良国立博物館 奈良県奈良市登大路町50
重文指定年月日:19990607
国宝指定年月日:
登録年月日:
独立行政法人国立文化財機構
国宝・重要文化財(美術品)
〓漆【きゆうしつ】は入念で、後補の塗りも比較的少ない。板壁に嵌装された宝篋印塔は、丈に比べて横広の形姿をしており、立体的かつ細緻な金工技術も優れている。扉に付された羯摩形蝶番や輪宝形掛金具も、形式に陥らぬ優美さを示している。附の法華経については、八帖を完備するとともに、奥書から書写年代(嘉禄二年<一二二六>)、筆者(孝阿弥陀仏【こうあみだぶつ】)、書写の経緯などが知られ、かつ類例の少ない同時代法華経の一遺例としても注目される。
〓漆・金工や彩絵の技法を勘案すれば、厨子本体も嘉禄二年を大きく隔たらぬ時期に制作されたと判断される。宝篋印塔を嵌装した同種舎利厨子の中では最も古様を示し、おおよその制作年代も推察される舎利厨子の優品として貴重である。