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柴垣蔦蒔絵硯箱

しばがきつたまきえすずりばこ

概要

柴垣蔦蒔絵硯箱

しばがきつたまきえすずりばこ

工芸品 / 江戸 / 関東 / 東京都

東京都

江戸/1601-1700

方形、丸角、被蓋造りの硯箱である。蓋の甲を緩やかに盛り上げ、蓋鬘や身の四側面にも膨らみをつけて、全体に丸みのある形態とする。身の見込みには下水板を敷き、中央に円硯、その上方に阿古陀瓜形の銅製水滴を納める。
 総体は黒漆塗りで蝋色に仕立て、蓋表から蓋鬘、身の側面にかけて、柴垣に蔦の絡まる図様を描く。柴垣は淡い金平蒔絵と研出蒔絵を用い、蔦は金と青金の薄肉高蒔絵に葉脈を針描し、一部の葉は金平蒔絵に葉脈を描割で表す。葉の一部は朱と金粉による高蒔絵で描く。土坡は金粉を蒔いて表し、金銀の切金を置く。蓋裏には、雨中を飛ぶ鷺の図様を描く。雨は銀研出蒔絵、鷺は銀粉の濃淡による研出蒔絵で表す。また、下水板と見込みには、雨と芦に波の図様を描く。下水板の雨には銀研出蒔絵、見込みの雨には金研出蒔絵を用い、芦と波は金の研出蒔絵で表す。
 蓋と身の口縁部は金地とし、蓋裏の左下隅に「古満休意作 同休伯安章極之(花押)」の金蒔絵銘がある。

縦24.2 横22.6 高5.3(㎝)

1合

東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9

重文指定年月日:20030529
国宝指定年月日:
登録年月日:

独立行政法人国立文化財機構

国宝・重要文化財(美術品)

本硯箱は、絵画的な図様を繊細な蒔絵技法で描いた作品である。特に、金平蒔絵、研出蒔絵、薄肉高蒔絵に描割、針描を併用して表された柴垣と蔦の絡み合う様子が、画面に奥行きを与え、朱と金粉の高蒔絵で描かれた紅葉が秋の風情をそえている。また、蓋裏の鷺、下水板と見込みの雨、芦に波の研出蒔絵では、金や銀の蒔絵粉の色調が微妙な変化を見せている。
 本品の丸角で蓋の甲を緩やかに盛り上げたこの硯箱の形態は、江戸時代初期・前期(一七世紀)に好まれたもので、きわめて絵画的な意匠表現は江戸時代の蒔絵が定型化する以前の様式を示す。瀟洒に表現された絵画的な図様、高度に洗練された各種蒔絵技法を特色とする硯箱の優品で、江戸時代における新しい様式を示す貴重な作例である。なお、古満休伯の極めに見える古満休意は、古満家初代当主として知られている。

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キーワード

蒔絵 / / / 薄肉

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