華厳五十五所絵
けごんごじゅうごしょえ
概要
『華厳経』入法界品に解かれている、善財童子が55の善知識に歴参して法を聴く話は、古来有名な仏教説話のひとつである。童子は次々に54の聖者を53ヶ所に訪ね、それぞれの聖者から一法門を聴き、最後に普賢菩薩の所にいたってその行願を会得した。奈良の東大寺にはその歴参の有様を図絵した、額装・巻子装・掛幅装の諸本が伝わっており、平安末期から鎌倉初頭に東大寺を中心とした華厳教学復興の機運の中で制作されたものと考えられている。本6面はその東大寺額装本のうちであり、ほかに東大寺に10面、藤田美術館に2面、その他に1面、計19面が伝存するのみである。一幅の絹に描いた小形のもので、ほぼ1図に1詣を描いているから、もと53、4面あったかと思われる。頭上に尊名を記した讚があり、その典拠は旧訳・新訳区々である。探玄記三十講が営まれていた東大寺尊勝院の食堂に掲げられていたのがこの「華厳五十五所絵」である可能性が指摘されている。
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公益財団法人 根津美術館