朝儀次第書
ちょうぎしだいしょ
概要
本書は、藤原定家以来の大納言を極官とする羽林家の家柄冷泉家に伝わる、朝廷の儀式次第を書き留めた典籍群である。
朝廷の儀式に臨むに際し、あらかじめ『西宮記』をはじめとする儀式書や古記録類から朝儀の記事を抜き出し、折本や折紙などに書き写して、次第書を作成したのが本書である。さらに、本件中の式場図面で、束帯人形を用いて予行練習をしていたことが想定される。また、『拝礼小朝拝次第』などの表紙の汚れ状態等から、朝儀で実際に用いられた遺品も多く含まれていることが判明する。
伝来の典籍文書を収納する土蔵(御文庫)は、寛永五年(一六二八)前後から朝廷と京都所司代の管理のもとに封印され、冷泉家では典籍文書の出納を行えなかった。享保六年(一七二一)に至り、封が解かれて冷泉家の管理にもどされると、冷泉家では直ちに整理と修理が行われた。本書も、享保八年から九年(一七二四)にかけて当主為久により、整理と補修が行われた。修理は、裏打ちをしたものである。折紙のものは、一紙全体を裏打ちしてから横の折目から切り、折本に仕立て直された。完成後、折本装のものは一箱に納められた。
為久は納められた箱の蓋裏に目録を帖り付けている。目録には藤原定家、為家などの筆者名の判定を記している。本書の中には、冷泉家と対立する二条家関係典籍も含まれている。それは、二条家が室町時代に断絶するとき、冷泉家が二条家所蔵典籍類を引き継いだためである。
箱に納められたもの以外に、『録事』『参議着陣事』の掛幅や『賭弓記』『仁安東宮御書始御記』の巻子装(もと袋綴装)も指定に含まれている。
鎌倉時代から室町時代(一部、江戸時代の写本を含む)に至る羽林家の朝儀次第書の一括史料を伝存する遺例はまれであり、儀式に臨んで用いた遺品を多く含んでいるのも貴重である。
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国指定文化財等データベース(文化庁)