『唐人絶句』は、淳煕七年(一一八〇)に南宋時代の政治家、儒学者である洪邁(一一二三~一二〇二)が五八歳にして編纂を始めたものである。洪邁は任地であった浙江の地で致仕後にこれを上梓したが、事半ばにして鄱陽に帰った。その内容は、絶句に限られてはいるが、唐詩の大規模な集成が行われた最古の本である。
本書の跋文によると、虫害にあった前半の板木に補刻が加えられ、新たに版刻された後半とともに再印された南宋版本であることがわかる。
相国寺住持も務めた惟高妙安(一四八〇~一五七六)の印が各冊に捺されていることから、おそくとも室町時代には我が国に伝来していたことがわかる。
本書は他には伝本の認められない孤本であり、摺り、保存状態ともによく、文化史上、極めて貴重である。