宋版宏智録 そうはんわんしろく

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  • 南宋
  • 6冊
  • 重文指定年月日:19950615
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 泉福寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 宏智正覚(一〇九一~一一五七)は北宋の末、曹洞の丹霞子淳の法を嗣ぎ、靖康三年(一一二八)天童山住持となり、止住すること三〇年、天童山中興の祖と仰がれ、公案を用いずにただ坐禅黙照を唱えるその禅風(黙照禅)は、臨済の大慧宗杲と並び称された。
 「宏智録」は文詞にも巧みであった正覚の語録・偈頌などを弟子たちが蒐め刊行したもので、本書はその南宋時代版本としては天下の孤本である。
 体裁は寛政三年(一七九一)泉福寺遵峰の修補になる後補薄茶表紙を装した袋綴本(明朝装)で、第一冊の巻頭六丁分は天明七年(一七八七)洞水月湛の補写并識語を収めている。料紙は唐紙で、版式は左右双辺、有界、半葉一〇ないし一一、二行、毎行一八ないし二〇、二二字、版心は白口、まま細黒口を交え、単黒魚尾に丁付を付し、補刻部分にはまま刻工名、字数を記す。宋諱は玄(始祖)、殷(父)等に缺画がみえ、第五冊末には紹興二十七年(一一五七)の刊記がある。
 本書の構成は、体裁、内容上からみて、正覚の(一)天童寺住持以前(第一・二冊)、(二)天童寺時代三〇年間の最初の一〇年(第三・四・六)、(三)天童寺再住以降のもの(第五冊)に大別される。しかし、この六冊本はおのおの刊行過程を異にし、丁数刻記、内容等の上からはおおよそ九巻に分類することが可能である。
 本書は寺伝によれば祖師道元の将来本と伝えるが、版本の摺印には字体や版心等がそれぞれに異なるほか、おのおのに宝祐(一二五三~六)、景定(一二六〇~四)頃の補刻を交える逓修本で、その印行時代は南宋末期に降るものとみられる。
 「宋版宏智録」六冊本は、円爾将来本を収めた「普門院蔵書目録」(重文)にも二部各六冊の存在を記すが、現存する完本はこの泉福寺本が唯一のものである。

宋版宏智録

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