本図はもと大分宇佐に鎮座する宇佐八幡【うさはちまん】の神輿【しんよ】三基に取付けられていた障子絵九面(一基向・左・右三面)のうち残る八面を屏風装に仕立てなおしたものである。同社の本地仏【ほんじぶつ】である釈迦が、むかし霊鷲山【りようじゆせん】で法華経を説いたという託宣にもとづいて、釈迦説法図および法華経二十八品中より方便品【ほうべんぼん】、譬喩品【ひゆぼん】、提婆達多品【だいばだつたぼん】、寿量本【じゆりようぼん】、厳王品【ごんのうぼん】を選び描いたものである。記録や画風から徳治二年(一三〇七)に作成されたとみられ、鎌倉時代の神輿障子絵の稀有な遺例として貴重である。