恋人たち
こいびとたち
概要
恋人たち
こいびとたち
建築と彫刻との融合を目指していたデュシャン=ヴィヨンは、そのひとつの方向として、壁面を装飾するレリーフという形式を選んだ。恋人を強く引き寄せようとする男と、それに対して複雑な反応を示しているかに見える女の身体が、奥行きの浅い空間の中でせめぎ合う凸凹の形態として一体化され、強い心理的効果をもたらしている。この作品の出発点となったのは、1907年のサロン・ドートンヌに発表されたマイヨールのレリーフ《欲望》であるとされているが、ダイナミックな抽象形態によって男女の間の性的な葛藤を表現するという狙いは、彼の弟マルセル・デュシャンが1912年に描いた一連の作品とも共通している。(M.H.)