佐野渡柳川櫛
さののわたりやながわくし
概要
象牙製、天丸形の挿櫛。天丸形は明和・安永期(1764~1781)に流行したとされる。象牙を紅で染め、撥彫(はねぼり)と平蒔絵で佐野渡を表す。佐野渡は、藤原定家の有名な和歌「駒とめて袖うち払ふかげもなし佐野渡の雪の夕暮」に基づいたもので、近世に絵画や工芸品に好んで描かれた。この技法は奈良時代の撥鏤(ばちる)に似たもので、幕末の櫛や紅板などにみられる。由来不明ながら「柳川」と呼ばれ、実際「柳川」在銘品が散見される。花柳章太郎(1894~1965)の旧蔵品で平成15年(2003)に遺族の青山久仁子氏より国立劇場へ寄贈された。