古今和歌集(元永本)下帖
こきんわかしゅう げんえいぼん
概要
平安時代、天皇の命令により日本で最初の勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)、古今和歌集が編纂されます。古今和歌集は原本を書き写した写本でのみ伝わります。これは現存する中でも制作された当初の形がほぼそのまま残っている最も古い写本として、大変貴重な作品です。この写本は紐でとじた冊子本(さっしぼん)で、上と下の2冊で構成されています。上巻の最後に「元永三年(1120年)七月廿四日」と日付が記されていることから、元永本(げんえいぼん)と呼ばれます。
元永本の特徴は、紙の豪華さです。文様を摺った紙と小さく切った金箔や銀箔を蒔いた紙とを、見開きで交互になるようにとじています。文様のバリエーションは十数種類に及びます。書に関しては見開きごとに書き方が変わり、書く位置にも変化がつけられるなど、巧みな書きぶりです。記したのは、書の名人として知られる藤原行成(こうぜい)の曾孫・藤原定実(さだざね)だと考えられています。
平安時代初期に成立していたかなは後期になると、書の美しさが洗練されていくとともに、この作品のように紙自体も華やかに仕立てられました。優美な王朝文化を体現する作品をご堪能ください。