東峰村の阿蘇4火砕流堆積物及び埋没樹木
とうほうむらのあそよんかさいりゅうたいせきぶつおよびまいぼつじゅもく
概要
約9万年前に発生した日本(にほん)列島(れっとう)最大級(さいだいきゅう)の破局(はきょく)噴火(ふんか)で生じた火砕流(阿蘇4火砕流)堆積物と埋没樹木である。平成29年7月に発生した九州北部豪雨の際、福岡県東峰村の大肥(おおひ)川(がわ)支流の護岸が洗掘されて、これらの断面が露出して発見された。
火砕流堆積物と埋没樹木の被覆(ひふく)関係や、かつて樹木が生えていた地山(じやま)との境界は明瞭に保存されている。火砕流堆積物には、火砕流本体が到達直前に希薄な状態で堆積した火砕サージが認められ、そこには高圧の水蒸気が発生して圧力の低い上部に抜けていった痕跡であるガスの吹き抜けパイプが多数観察される。埋没樹木は、全長約6.9m最大幅70cmのものを含む3本が確認された。これらの樹種は、ハンノキ属ハンノキ亜属、トウヒ属バラモミ節からなる。加えて古土壌(こどじょう)に含まれる花粉分析等も踏まえ、9万年前の火砕流堆積以前、ここは河畔(かはん)の氾濫(はんらん)等によって裸(ら)地化(ちか)した環境で、その周囲に針葉樹(しんようじゅ)と落葉(らくよう)広葉樹(こうようじゅ)の混合林が成立していたと推定された。さらに、樹木の倒れた方位等から、阿蘇4火砕流が東西方向の山地列(さんちれつ)と河谷(かこく)に沿って強く西に誘導されたことを裏付ける地点であると判明した。
このように、火砕流堆積物の内部構造に加えて、古環境の復元に必要な情報が得られ、日本最大級の火砕流の拡散(かくさん)経路(けいろ)や速度の推定につながると期待され、学術上の価値が高い。