蓬莱鏡
ホウライキョウ
概要
蓬莱山は古代中国で説かれた東海中の理想郷で、神仙が住み不老不死の霊薬があって、松・竹・梅が繁り、天空に鶴が舞い、海に亀が浮かぶとされる。日本では遅くとも律令期に神仙思想が見られたが、工芸意匠に頻出しだすのは平安時代後半期である。長寿への思いから日常鏡の意匠にも多用され、蓬莱文鏡の系譜は近世末まで連綿と続いた。松樹の繁る岩礁が右方に屹立し、荒磯の左上方に双鶴が舞うという図様が定立するのは十三世紀前半ごろである。本鏡は、亀形鈕にやや形式化が見えるが、岩礁表現は古く、内・外区の飛鳥もE甲17-34に近いので、十三世紀は降らない。