吉田松花堂 主屋
よしだしょうかどう おもや
概要
吉田松花堂は伝統薬の製造・販売を家業とする商家で、熊本城下の市街地に大規模な敷地を占める。医学を修めた初代吉田順碩が開発した「諸毒消丸」は、日常の携行薬、熊本の名産品として広く普及し、富の蓄積により敷地の拡張を進め、建物を増改築して、明治末期頃に広大な邸宅をなすに至った。伝統薬の店舗・製薬場である主屋は明治11年建築で、通りに面して鼠漆喰塗りの重厚な構えを見せる。主屋は、造付けの薬棚や旧製薬場、イッカクの角を用いた違棚など家業にまつわる設えが独特で、中国風意匠の二階座敷、華やかな杉戸絵など意匠的にも優れている。同時期建築の土蔵とともに近代の製薬・売薬を営む商家の構えを遺す。賓客の宿泊施設にもなった端正な広間の十五畳、材の取り合わせが華やかな茶室などを含め、意匠の優れた近代和風建築群として価値が高い。