四季花鳥図(冬)
しきかちょうず ふゆ
概要
呂紀(りょき)は、中国・明時代中期、十六世紀に活躍した画家です。花鳥画を得意とし、皇帝にその才能を愛されて、宮廷画家として最高の地位までのぼりつめました。春、夏、秋、冬の四季の花々や鳥たちを、四幅一組で表したこの作品は、呂紀の代表作としてよく知られています。
四幅の内容を簡単にご紹介しましょう。春の幅では、モモの花の咲き始めた渓谷に、オシドリ、ハト、タイカンチョウ、ヒバリが集っています。夏の幅は、奇妙な形の石が置かれ、クチナシやタチアオイ、カンゾウが咲く庭園の景です。コウライウグイスやシジュウカラ、カモの姿がみえます。秋の幅は、キンモクセイとフヨウ、キク、そしてキュウカンチョウやサンコウチョウ、アカツクシカモを描きます。冬の幅は、S字上に流れる滝が印象的な景観です。崖からウメやツバキが枝を伸ばし、キジやスズメが寒さに身を寄せ合っています。
呂紀は古い時代の絵画をよく研究して独自の工夫を加えたといいます。その画風の特徴は、多彩なモチーフを複雑に組み合わせながらも、手前から合理的に配置していって空間の奥行をわかりやすく示す構図法にあります。また、花や鳥を緻密な筆線と華麗な色彩で見事に表す技術力も、人気の秘密でしょう。呂紀の画風は子孫や弟子たちに引き継がれ、その影響は中国のみならず、朝鮮半島や日本、遠くペルシアまで広まっていきました。