楓蒔絵文庫
かえでまきえぶんこ
概要
この作品は、文庫と呼ばれる、本や紙、筆記用具などの手回りの品々をおさめる箱です。漆で図柄を描き、その上に細かい金粉を蒔きつけ定着させて文様を表しています。このような技法を「蒔絵」と呼びます。箱の表面には楓の樹が描かれています。楓の枝ぶりは、蓋の表、裏、箱を開けた内側や底にまでつながっています。全面を覆うように連続する立体的なデザイン構成が、この作品の特徴です。こうした文様の構成は、尾形光琳に代表される琳派のスタイルにならっています。作者の原羊遊斎(はらようゆうさい)は江戸時代後期を代表する蒔絵師で、戯作者や俳諧師などの文化人とも交流があり、大きな工房を構え、櫛や印籠、茶道具などを数多く制作しました。原羊遊斎の作品は、現在のブランド品のように、高級品として当時たいへん人気がありました。