黒書院四の間南襖東 全図
概要
黒書院四の間二十八畳の障壁画は、長押を境に下方の障壁画十九面と上方の小壁貼付十一面からなり、下方の障壁画が菊花を主題とするため、別名菊の間(注1)とも言われる。四の間の図様は四周に連続し、菊花の様々な形態とともに竹垣や柴垣、土坡や背後の流水等が変化を添えている(注2)。長押上の小壁貼付の扇面散図(注3)は薄(すすき)の野辺に計四十六面の扇が散らされ(注4・5)、四の間全体が秋の景で満たされている。四の間南側襖四面の菊花図では、白菊を主とし、竹垣や画面中央の柴垣とともに変化をつけた横成になっている。背後には流水があり、北面には源氏雲も配されている。長押上の扇面散図は、蜀葵図、桜花図、山百合図、枇杷に小禽図(墨画)、梅竹に鷺図、草に山水図(墨画)、柴垣に菊図(墨画)、八橋菖蒲図、雪中枯木に小禽図(墨画)、柴垣に朝顔図、夜梅図、河骨にかいつぶり図、浜松図、桜花散文の計十四面が、左より吹く風になびく薄(すすき)の上に散らされている。
(注1)菊花図は江戸時代初期における狩野派の好題目であって、各寺院に名品が遺されている。
(注2)菊の垂直性と流水の水平性、そして両要素を持つ垣根の巧みな組み合わせに変化がみられる。
(注3)「やまと絵」系で発達した扇面散図屏風に先例をみる。障壁画では流水に扇を散す扇面流図が多い。
(注4)各扇面画の内容は多彩で、墨画や金碧にわたり題材も変化にとむ。
(注5)狩野尚信が一部を手がけ、残りは他の狩野派の筆者が描いたと考えられる。
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