マールワール王ジャスワント・シング立像
おう りゅうぞう
概要
インドでは、インド神話や、シヴァ神、ヴィシュヌ神などのヒンドゥー教の神々、王の肖像や歴史的なエピソード、男女の恋愛などさまざまなテーマを緻密なタッチと鮮やかな色彩で描いた、細密画とよばれる絵画のジャンルが発達しました。多民族国家であるインドでは、細密画の表現も地域によってさまざまで、それがまた魅力であるともいえます。
マールワール王国は13世紀から20世紀半ばにかけてインドのラージャスターン地方を支配したヒンドゥー王朝です。
ここに描かれたジャスワント・シングは1629年に生まれ、11歳にして父のガジ・シングの跡を継いでマールワール王国の藩王に即位しました。ジャスワント・シングはムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンに厚遇され、ムガル帝国の政治家・武将としても活躍しました。しかし、シャー・ジャハーンが重病になると、4人の王子の間で皇位継承をめぐる戦争が勃発し、ジャスワント・シングもそれに巻き込まれていきます。戦争は結局、ジャスワント・シングと対立したアウラングゼーブが勝利し、両者の間の対立はそのまま長く続くことになりました。それはジャスワント・シングの死後も収束することなく、マールワール王国とムガル帝国の間の長期的な戦闘へと展開していきました。