蚕豆花図
サントウカズ
概要
花を開き、実を結ぶ蚕豆を写生し、宋代の花卉図に流行した折枝の形式を借用して画面に収める。左下に「寿平」「惲正叔」の二印が押されている。筆者、惲格(一六三三ー九〇、字は寿平、号は南田、江蘇武進の人)は清朝初期の花卉図に新生画を開いた文人画家であるが、彼の康煕二五年(一六八六)の落款をもつ花卉冊(上海博物館蔵)中の蚕豆図は本図をトリミングした姿に描かれている。惲格の花卉図では淡彩の没骨法が多用されるが、本図は花弁に着色鉤勒法を用い、没骨と鉤勒とを併用している。宋代の写生花卉図を模倣することから出発した惲格の数少ない試行錯誤期の作品と思われ、その価値は高い。