IHS紋蒔絵螺鈿聖餅箱
IHSモンマキエラデンセイヘイバコ
概要
大航海時代に大型商船で来日した西洋人のなかには、多くの宣教師もいた。彼らも蒔絵を注文した。 これは、カトリック教会の聖餐式に用いる聖餅箱、すなわちイエスの肉体を象徴するパンを収納する容器である。IHSはイエスの名を表す記号。これを光の輪で囲み、Hの文字に十字架を立て、三本の釘を刺したハートを添えた意匠は、天文十八(一五四九)年に来日したフランシスコ・ザビエルの属するイエズス会の紋章である。西洋人が祖国に持ち帰った初期の輸出漆器の中でも、聖餅箱は、世界で十数例ほどしか確認されておらず貴重である。