天昭丸
てんしょうまる
概要
「和船:天昭丸」神戸高等商船学校時代からの数少ない模型の一つであって、模型内部に昭和5年10月大阪:天野造船所天野三吉作と記されている。この模型が寄贈された経緯についての記録はないが、昭和11年の新聞紙上に模型紹介記事が載せられているから、製作されて間もなく寄贈されたものであると思われる。模型と共に和船に関する寸法書も寄贈されたとのことであるが、図書館の全焼によって失われたものか、残念ながら現存しない。天野三吉氏は大阪の造船所主であって、若い頃北前船の建造に従事し、老年になってから記念のため模型を作成寄贈したという。この模型とほとんど同型の模型が、旧船主右近家にも伝えられ、現在は同家から神戸海洋博物館に寄贈されているが、同じく天野三吉昭和7年7月製作となっており、また横浜国立大学にも一隻所蔵されている。本模型は全長1.06メートルの小型のものであるが、精巧を極め、使用材料は実際の和船と同様の材質を選び、構造等は細部に至るまで省略することなく、細かく彫刻をほどこし、船内偽装品も完備した逸品である。 製作には5年の日時を要したいわれるのももっともであろう。船型もアカマ梁で最も幅が広く、儀装も明治中期の北前船末期の特徴をよく示し、各部寸法の比率も正確であって、北前船の標準的な模型ということができる。