玉斧
ぎょくふ
概要
これは、縄文時代の胸飾りです。上の方にある丸い穴にひもを通して胸にさげていたと考えられています。一般的なものは紡錘形(ぼうすいけい)といって円柱型で上下が細くなる形ですが、これは斧(おの)のような台形の形をしています。角は丸みを帯び、丁寧に磨かれているのがわかります。色は、光にかざすと少し透けるような、美しい緑色です。この石は、翡翠(ひすい)という宝石です。産地は、現在の新潟県南部の姫川(ひめかわ)や青海川(おうみがわ)流域に限られていて、当時から大変貴重な石でした。そのため、すべての縄文時代の集落からこのような胸飾りが見つかるわけではありません。また、見つかっても集落につき一個程度ですので、限られた人しか身につけることができませんでした。この玉斧は、新潟県の産地から200キロ以上も離れた栃木県で発見されました。当時の人々が産地まで翡翠を取りにいったか、あるいは交易によってもたらされたものでしょう。こうした胸飾りが見つかるのは、その地域の中でも交易の中心になっていた大きな集落であると考えられています。