火熨斗
ひのし
概要
新沢千塚(にいざわせんづか)古墳群は、奈良県の橿原(かしはら)市にある4世紀から6世紀の古墳群です。約600もの古墳は、小型の円墳(えんぷん)が中心ですが、中でも注目すべきは、5世紀後半に作られた長辺22m、短辺16mの長方形墳「126号墳」です。決して大きくはないこの古墳から、たくさんの貴重な品々が見つかりました。
木製の棺の外には、四神(しじん)、つまり中国の神話で東西南北を守る四つの神様が描かれた日本最古の例である漆盤(うるしばん)や古代のアイロンである火熨斗(ひのし)などが置かれていました。また、棺の中の人物は、豪華な装飾品を身につけていました。頭のあたりから、冠につけていた飾りであろう金製の板が見つかり、服には歩揺(ほよう)と呼ばれる小さな金属の飾りがたくさんついていました。またこの人物は、金製や銀製の合計八つの指輪、三つの腕輪をはめ、非常に繊細につくられた耳飾りをしていたようです。これらは、中国大陸や朝鮮半島で作られたものです。さらに、棺の中からは当時は大変貴重であったガラス製の器とお皿もみつかっています。これらは、西アジアで作られたと考えられます。このようにさまざまな国のものが集まっていることから、この古墳に眠っているのは、国際感覚を身につけた人物であると考えられます。