志野茶碗 銘 振袖
しのちゃわん ふりそで
概要
素朴な絵と、釉薬(ゆうやく)と呼ばれる白いコーティングで彩られたこの作品は、岐阜県・美濃地方で作られた志野と呼ばれる種類の茶碗です。釉薬の表面にある、空気が抜けたときにできた小さい穴や、焼き加減によって現れた赤茶の色合いなど、表情豊かです。茶碗に描かれたすすきと花のようなもようが、釉薬を透かして見えています。これは、釉薬をかける前に鉄の絵具でもようを描く、下絵付けと呼ばれる技法で絵付けされたためです。
茶碗は、いびつな形をしています。土を器の形に整えた後に、へらで削ったり、手で力を加えてゆがませます。こうすることで独特な形を作り出しました。飲み口の高さも、場所によってあえて変えています。見る角度を変えると、いろいろな表情があらわれる作品です。実際に手に取ってぐるりと周囲から見たときの変化を、想像してみてはいかがでしょう。
この茶碗には、振袖(ふりそで)という名前が付けられています。軽やかな線で描かれた絵や、赤味を帯びた色合いが華やかなきものを連想させたのでしょうか。あるいは動きのある器の形が袖を振った様子に見えたのかもしれません。いつ、だれがどういった理由でつけたのか、正確なことはわかっていません。みなさんは、「振袖」という名前がどこからつけられたと思いますか?