松鷹図
5面(旧永島家襖絵)
概要
室町から桃山時代に栄えた曾我派に倣って鷲や鷹などを重要なレパートリーとしていた曾我蕭白には、水墨あるいは水墨を主体に彩色を交えた作品がいくつかある。
ボストン美術館のまくりの大きな「鷲図」、背景にうつくしい彩色の花木を添えた三点の「鷹図」、最近知られるようになった「鷹図押絵貼屏風」 (三重県四日市市・個人蔵)など、いずれも優れた作行きを示すものばかりだが、そのなかでもふるくから優れた作品として知られるのがこの「松鷹図襖絵」である。
圧倒的存在感が異様な迫力を生んでいるが、その姿態の描写となると、羽の一片一片にいたるまで執拗なまでの丹念さで克明に描き込まれており、蕭白が微細なものの表現にしばしばみせるモノマニアックな性癖がここにも片りんをのぞかせている。
それに対して鷹の止まる古木の描写は鷹の精密さとは一転して、墨をたっぷりと含ませた太い筆や刷毛に持ち替えて、力強くしかも素早いタッチでさばかれている。
その対照のコントラストが生む独特の表現効果がこの作品を特徴づけている。(山口泰弘)