写経断簡・紺紙銀字経「般若波羅蜜多心経」
はんにゃはらみたしんぎょう
概要
「般若波羅蜜多心経」
般若心経、心経ともいう。
【成立】
般若心経のサンスクリット本には小本と大本の2種があり、小本に序文と結末をつけたものが大本であるが、本経は小本系の漢訳である。小本系のサンスクリット写本はインドにも他のアジアの国々にも残っていないのに日本の法隆寺に保存されている。その法隆寺写本は大体8世紀の成立であると想定されているが、本経はその訳出年代から見て500年代に成立したサンスクリット原典の翻訳と考えられる。
【内容】
1巻。小本系の漢訳であるから序文がなく、直ちに観自在菩薩から始まる262文字で書かれている。「色即是空、空即是色」で有名な心経の「心」のサンスクリット語=フリダヤはエッセンスを意味し、厖大な大般若経のエッセンスを取り出しコンパクトにまとめられたものであるから心経が最も広く知られることになった。ものにとらわれてはいけないと説くのが般若経であるので、この心経も無執着を説く。
【後世への影響】
本経の最後は掲帝掲帝……という密教の真言(マントラ)で終わっている。これは呪術的効果を増すためと言われているが、現在でも本経は呪文のように受けとられる場合が多い。
【関連経典】
摩訶般若波羅蜜大明呪経・普遍智蔵般若波羅蜜多心経・唐梵翻対字音般若波羅蜜多心経・仏説聖仏母般若波羅蜜多経
大蔵経全解説大事典(1998年)より抜粋