晩冬の桜
ばんとうのさくら
概要
『晩冬の桜』には、葉をすっかり落として枝を露わにした冬の桜の姿がほとんど墨の線だけで描かれ、わずかに金泥や胡粉を施すなど微妙な調子が加えられています。枝や幹は筆で装飾的に描かれ、幹の線は、楕円を囲むように洋画的な構成のまとまりがつくり出されています。微妙な濃淡を施して様々な方向に伸びる線は風と枝のたわむ動きをはらんでいるようです。大正から昭和初期にかけて近代日本画の革新のため、写実と様式美が結びついた作風など、様々な表現に取り組んだ御舟の線にかける執念と実験的な意欲がうかがわれる作品です。