独活
概要
80
独活
Spikenards
1937(昭和12)年
油彩、麻布 117×74cm
oil on canvas
〈独活〉はシュルレアリスト北脇昇の誕生を告げる作品である。〈断層面〉とともに1937年の第7回独立展に出品されたが、く断層面〉が筆触やぼかしなどの表現にいまだ独立美術協会流のフォーヴィスムの跡を残すのに対して、〈独活〉では彼の画面の特徴である薄塗りの丹念な描写となっている。独活の形態に、あたかも踊る人間の姿のような面白さを認めて者想されたというが、2本の独活の根なし草的存在に託された諧謔的ユーモア、その影が表す不吉な心理的ざわめき、あるいは独活と木の切り株による「うどの大木」のしゃれなど、画面の逸話としての組み立て自体は意外に直線的で、日常的な論理に沿う。北脇のその後の探求は、自然科学、哲学、宗教や易などさまざまな領域の諸観念を画面の外枠として導入し、それらを図解することに向けられた。表現自体はごく平仮な写実描写と幾何学的図形・図式との折衷に終始したが、ともかくもなんらかの知識体系によるイメージの総合を志向した点で、彼は、抒情的心象風景へと収束しがちな日本のシュルレアリスム絵画史の中で独自な地位を占めている。