地蔵平遺跡出土石器
じぞうだいらいせきしゅつどせっき
概要
地蔵平遺跡は、佐賀市富士町大字大野に所在し、嘉瀬川水系上流域を流れる河川の合流部に臨んだ標高約300mの河岸段丘上に立地する後期旧石器時代~縄文時代早期を主体とする遺跡である。
佐賀県教育委員会が平成18年度から平成22年度にかけて発掘調査を実施した。調査の結果、広域テフラである姶良Tn火山灰(AT:約28,000~30,000年前に降灰)の一次堆積層が検出され、後期旧石器時代~縄文時代早期の遺物約47,000点が層位的に出土するとともに、礫群、土坑、石器ブロック等の遺構も検出された。ATの残存状況は極めて良好で、厚さ約15cmの火山灰が連続的に確認された地点もある。
旧石器時代の遺物は、ATを挟む上下の複数の層から、後期旧石器時代前半期のナイフ形石器・台形様石器、後期旧石器時代後半期のナイフ形石器・台形石器・剥片尖頭器・角錐状石器・掻器・削器・彫器・ドリル等が出土しており、その他にも原石・石核・素材剥片や接合資料等、石器製作に関わる遺物も多く出土している。
地蔵平遺跡では、AT降灰直前の後期旧石器時代前半期、AT降灰後の後期旧石器時代後半期、そして後期旧石器時代終末へと石器が変遷していく過程をとらえることができる。なかでも、AT降灰前後における石器の組成とその変遷が判明したことは、大きな成果である。
また、ATを挟む複数の層から大量の石器が出土しただけでなく、石器製作に関わる遺物も多く出土したことから、当地が長期間にわたって脊振山間部における狩猟や交易といった人類活動の拠点であったことが推定される。